テクノスター CAEフォーラム2024は、多くの皆様のご参加により満員御礼となり、急遽会場を増設して開催されました。
今回のフォーラムでは、最新のCAE技術や実践事例について、6つのユーザー講演と3つの基調講演、及びランチョンセミナーが行われ、参加者の皆様との活発な議論が展開されました。このページでは、各講演の内容についてのレポートをお届けします。
「テクノスター CAEフォーラム2024」
日 時:2024年6月28日(金) 11:00~17:45
会 場:赤坂インターシティコンファレンス 301 & 302
参加費:無料(事前申込制|ユーザー・非ユーザー問わず)
詳 細:イベント案内ページ
<講演資料(配布用)は本イベント参加者のみへの配信となります。何卒、ご了承ください>
テクノスター CAEフォーラム2024 ~ご挨拶~
株式会社テクノスター
代表取締役社長
立石 勝
起業から現在までを振り返り、5カ国7拠点に約170名で一丸となって取り組んでいる状況をご報告しました。
Jupiter-Solutionsの紹介として、PSJ(Python Scripting for Jupiter)やOpenFOAMのPre-PostとしてリリースしたJupiter-CFD、Jupiter内蔵ソルバーであるSunShine-Solverの特長をご紹介しました。
また、今後の方向性として、クロスプラットフォーム化、Digital Twin、AIやXRの取り組みなどをお話させていただきました。自動ヘキサメッシュ機能についても引き続き挑戦しております。
今後も、テクノスターの活動にぜひご注目ください。
Recent Topics of TechnoStar
Jupiter最新情報ご紹介
株式会社テクノスター
技術本部
鷲田 肇
技術部の鷲田からは、Jupiter V5.0シリーズの新機能についての紹介がありました。Pre・Post統合の他、ユーザーが機能をカスタマイズ可能なPSJ、目的・用途に沿った各種サーフェスメッシュ編集機能、ボルトの自動締結機能、最適化結果向け表示機能、結果差異表示機能などを紹介しました。また、更なるパフォーマンス改善および使い勝手向上、PostのPSJ拡充などを含むV5.1の開発計画についても報告しました。
TechnoStar Web Viewerご紹介
株式会社テクノスター
技術本部
藤田 大輔
技術本部の藤田からは、最近の開発機能である二つのビューイング機能についての紹介がありました。WebブラウザでCAE結果を可視化するオンラインビューワーと、海上技術安全研究所(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所)様と共同開発した、CAE結果を現実空間に表示するXR技術について報告しました。
SunShine Solverご紹介|Jupiter CFDご紹介
株式会社テクノスター
技術本部
Xiang Dianxiang
取締役(CTO)の項(シャン)からは、汎用有限要素法ソルバー「SunShine-Solver」、及びOpenFOAM向けCFDソフトウェア「Jupiter-CFD」についての紹介がありました。SunShine-Solverの各種解析機能、並列計算や自動サブストラクチャー機能による大規模モデルに対する高速性などを報告しました。また、OpenFOAMの各種計算事例や精度比較、専用メッシャーのインテグレーションや解析内容に応じてカスタマイズされた専用GUIについても報告しました。
固体向け粒子法Peridynamicsソルバーご紹介|AIへの取り組みご紹介
株式会社テクノスター
開発本部
井町 美智也
開発部の井町からは、固体向け粒子法PeridynamicsソルバーおよびAIへの取り組み状況についての紹介がありました。Peridynamicsソルバーの有限要素法では難しい破壊や複雑な損傷に特化した機能特徴や優れた並列化性能について報告しました。また、最近のAI技術の向上に加え、Jupiter内での形状検出、マニュアルでの曖昧検索対応、PSJコーディング支援、自然言語によるJupiter操作支援などのAI利用機能の開発計画案についても報告しました。
Jupiterによるサーマルショックの一気通貫CAE解析
トヨタ自動車株式会社
ボデー開発部
前田 茂雄 様
最初に、排気管のCAE解析についてご説明いただきました。特に、強度評価、振動評価、騒音評価の3点に焦点を当て「強度評価では、車両が悪路を走行する際の排気管の振動とその影響や、評価部についての概要」「振動評価では、エンジン振動が排気管に伝わる共振や、複数の共振モードに対応する必要性、及び対策が重要な部位について」「騒音評価では、マフラー放射音と流体の共鳴について」、それぞれのメカニズムと評価方法をお話いただきました。
次に、Jupiter導入の経緯についてお話いただきました。開発期間とテスト運用を経た正式リリース後、モデル作成時間が40時間から12時間に短縮され、モデル作成コストが70%削減されたことを語っていただきました。
そして、主題であるサーマルショックのメカニズムについて解説いただきました。高速走行中に水たまりを通過した際の排気管への影響を詳述し、水がかかることで排気管が冷え、変形することをご説明されました。年度ごとの進捗も述べられ、水はね設定の自動化、温度設定の自動化、報告書の自動化、ソルバーをJupiter内蔵のSunShine-Solverへ変更したことより、トータルの時間が36時間から1.3時間に短縮できたことを示されました。
質疑応答では、自動化の有用性は先行開発段階プロセス、特にレイアウト決定時に重きをおいていることを述べられました。また、SunShine-Solverの非定常解析の精度は問題なかったこともご回答いただきました。
【ランチョンセミナー】JSOLのたわみ解析ソリューションの紹介
株式会社JSOL
エンジニアリング事業本部
宮内 彰太 様
JSOL様が開発したプレス成形シミュレーションソフトウェアJSTAMPに、本年度新しく搭載されたオプション機能である「型構造解析機能」をご紹介いただきました。本機能は、型構造設計におけるリードタイムやコスト削減を目的として、JSOLご指導の下、弊社テクノスターと共同で開発されたものです。
全自動テトラメッシング機能、複雑な型構造部への境界条件の適用、接触領域の自動抽出などの専用セットアップ機能、JSOL様独自のモデルリダクション手法、Ansys LS-DYNAインターフェースなどの機能が揃っています。これらの機能により、モデル構築時間の削減や従来手法と比較して計算時間の大幅な短縮が実現されています。
JSOL様のJSTAMP「型構造解析機能」をぜひご活用いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
【基調講演】森林踏破用e-Axleを設計から試作まで一人で開発! ~CAE、Digital Fabricationなどで作っちゃいました、個人でEVを!~
株式会社デザイオ
青木 英明 様
日本の農林業は大きな課題を抱えており、その対策が喫緊の課題です。青木様は、農林業効率化を目指して、急坂や障害物など過酷な環境で走行可能な新しい形態のEVロボット台車を開発試作されました。現在、具体的な利用面の現場実証試験を進めておられます。本開発では、クローラを直接駆動するモータ・ギア・インバータを一体化、出力約3KWのe-Axleユニットを新規開発したことが特徴で、主にこの開発経緯をご紹介いただきました。本開発における特徴は、企画から設計・試作に至るまで全工程をほぼ一人で仕上げられた事です。
近年CAEやソフト開発技術進展でオープンイノベーション手法が個人レベルでも容易に使えるようになってきており、強い思いを独自の行動力で一気にやり遂げることが可能な時代になりました。このプロセスが新たなイノベーション開発のヒントになるのではないか、その思いでの実践経過も含めた事例紹介をしていただきました。
PSJを用いた解析モデル作成の自動化
リョービ株式会社
ダイカスト金型本部 設計部
卯本 智宏 様
リョービ様のダイカスト金型本部では、PSJ(Python Scripting for Jupiter)を活用して解析モデル作成の自動化を推進されており、本発表では、その背景、活動内容、効果、そして今後の予定についてご説明いただきました。
まず、金型の起工プロセスについてご説明いただきました。湯流れ解析、構造解析、凝固解析を用いて金型設計を行う際に、PSJを活用して解析モデル作成の自動化をされています。PSJの導入により、手動作業の削減とヒューマンエラーの防止を目指されています。
PSJの導入背景として、ダイカストの需要増加に伴う解析手法の進化と手動作業の増加が挙げられました。これにより、解析モデル作成工数の増加や品質低下の課題に直面されていました。
PSJを活用した具体的な施策として、解析モデル作成工数の削減を目標に掲げ、PSJを用いた自動化によって作業効率を大幅に向上されました。これにより、解析モデル作成工数を従来の5.40時間から0.41時間以下に削減し、手動作業工程も27工程から8工程以下に削減することに成功されました。
活動内容と効果については、PSJを用いたプログラム作成の流れやJOB作成プログラムの自動化例が具体的にご紹介されました。自動化により、大規模構造解析を新型起工全点へ適用可能とし、QCD(品質、コスト、納期)レベルの維持とお客様のご要望に迅速に対応する体制を整えられました。
最後に、今後の予定として、PSJによる自動化技術の展開と人材育成の計画をご説明されました。PSJを用いた解析モデル作成作業の完全自動化を目指し、テクノスターとの協業を通じてさらなる技術革新を図られるとのことです。質疑応答では、テクノスターのサポートの手厚さに感謝の意を示され、自動化の有用性についての質問に対し、QCDのレベルを維持しながら、お客様の要望に迅速に対応できる体制を整えることの重要性を強調されました。
Honda二輪パワーユニット開発におけるJupiterの活用について
本田技研工業株式会社
二輪・パワープロダクツ事業本部 開発生産統括部
パワーユニット開発部
小倉 久功 様
本田技研工業二輪・パワープロダクツ事業本部様の機種開発初期段階においては、物前CAE解析のニーズが年々高まってきている中で、常に解析効率化が求められています。本講演では、CAE専任者であり機種開発者という立場から、テクノスター製品を活用した効率化について複数の事例をご紹介いただきました。
機構解析では、大規模クランクケースなどのメッシュ作成や縮退モデル作成にて、JupiterとSunShine-Solverを活用されてます。構造解析では、Oasis Mesher機能によりエンジンメッシングを全自動高速化し、また、排気系シェルモデルも専用機能群で効率化されています。
さらに、新機能による適用範囲の拡大として、PSJを使ったピストン温度分布合わせこみの自動化、及び疲労強度評価機能や結果比較機能の運用拡充についてご説明いただきました。また、新たな取組みとして、SunShine-Solverによる非線形面圧解析、Jupiter-CFDによる排気系熱流体解析トライアルに着手されています。加えて、テクノスターのエンジニアが常駐することで、現場と開発元をホットラインで連携し、要望反映などを迅速に対応していることもご紹介いただきました。
今後の要望として、既存ユーザーに寄り添った機能開発の継続、アジャイル開発と高品質の両立、GUIを直感的に使いやすい操作性に向上、一般派遣エンジニアの人員拡充を挙げられました。
最後に、機種開発の効率化により、より多くのお客様に「生活の可能性が広がる喜び」をお届けできるよう努めたいとのコメントをいただきました。質疑応答では、自動化や効率化に関する意見交換の申し出もございました。
解析レポート自動化機能による開発工数・手戻り削減
スズキ株式会社
四輪動体系CAE/MBD統括部
笠原 緑 様
スズキ四輪技術本部様では設計者CAEを推進しており、設計者自身が担当部品の構造解析を行い設計品質向上と開発手戻りを削減された実績をご説明いただきました。
設計者がCAEを実施した解析レポート(エビデンス)が残っていない課題があり、解析レポート自動化機能を作成することで、過去の設計情報の伝承として解析レポートのデータベース構築共に、設計者の資料作成の工数を無くし、自動でレポート作成するシステム化をされました。これにより、技術が伝承され、無駄な検討工数や開発手戻りの削減に成功した事例をご紹介いただきました。
【基調講演】形によらない本質設計:1D-CAEとModelicaによるモデルベース開発
平野リサーチラボ
平野 豊 様
システム開発においては、モノを作った後に不具合が発覚し開発が手戻りするのを防ぐため、予め、システムの本質的な挙動を数理的に記述したモデルを作成しておき、モデルによるシミュレーションでシステムの挙動を予測・確認しておくことが有効です。このような開発手法を、モデルベース開発(Model Based Development、以下MBD)と呼ぶ事からご説明いただきました。MBDで使用されるモデルとしては、集中定数系の微分代数方程式で動的な挙動を記述するモデル、すなわち、1D-CAEモデルが使用されます。零から新規システム開発を行う場合、一般に、1D-CAEによるシステムの仕様・動作検討を行った後、FEMやCFDなどの3D-CAEによる各部品の詳細設計を進めることが推奨されます。
本講演では、1D-CAEモデルの記述法として、非因果的モデリング(Acausal Modeling)と呼ばれる手法について説明し、非因果的モデリングのためのモデリング言語としてModelicaの解説をしていただきました。そして、Modelicaによる研究用電動車両(EV)へのMBDの適用事例をご紹介いただきました。また、時変形のシステムや代数拘束式を含むシステムのMBDでのModelicaの利点もご説明していただきました。
船外機におけるギヤ強度解析の効率化
ヤマハ発動機株式会社
技術・研究本部 デジタル開発統括部 MBSE推進部
坂爪 大輔 様、古川 大作 様
ヤマハ発動機マリン事業部様では、CAEを担当するスタッフが不足しているという課題に直面しており、解析に多種多様なソフトウェアを使用しているため、ソフトウェアと担当者が一対一で対応する場合が多く効率が低下している一面があるとのことです。一方、ソルバーの置き換えによる解析時間の短縮を目指す事を検討し、この目的を達成するために、プリポストについてはテクノスターのJupiterに統一される事をご説明いただきました。
今回の講演では、船外機の最終駆動に使用されるベベルギアの強度解析の適用事例について解説していただきました。テクノスターに依頼した内容は、従来と同等の結果が得られるADVCモデルをJupiterで作成し、計算結果を効率良く出力できるシステムを開発することでした。その結果、従来5日程度かかっていた解析作業が1日で完了するようになり、大きな効果を得ることができた事をご披露いただきました。短縮効果の内訳としては、ADVC採用による効果とJupiter採用による効果が半々だったとのことです。
今後もエンジンの他部品へ同様な取り組みを行う事で、更なる効率向上を目指しておられます。
Jupiterによる構造強度シミュレーションの効率化と設計者CAEの取り組み
ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社
設計技術部門 設計環境技術1部
戸田 諒 様
ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ(SGMO)様からは、Sony様に対する設計者CAEのソフトウエア導入とツールのサポート業務についてご講演していただきました。Sony様では、自動化に特化したツールとして、JupiterのカスタマイズツールであるOne Push Mesh機能やPython API機能(PSJ)を使用した内製ツールを活用して、CAE業務の自動化に取り組んでいます。特に設計技術部門では、「CAEによるDesign-Innovation」と「設計プラットフォームの構築」をスローガンに掲げて、日々の業務を行っておられます。
本講演では、Jupiterの活用例として、以下4つの項目について解説いただきました。
【One Push Mesh機能】【PSJ による解析テンプレート開発】【設計者CAE取り組み】【構造解析の自動化】
これらの結果、個々の解析作業の効率化が図られ、解析業務全体の効率化の効果が得られているとのことでした。Jupiter 利用者数は年々増加しており、今後も他部門へ同様な取り組みを行う事で、更なる効率向上を目指しておられます。
【基調講演】車両開発におけるCAE/MBD戦略
スズキ株式会社
四輪動体系CAE/MBD統括部
鈴木 智之 様
スズキ様の【概要と事業】【2030年度に向けた成長戦略】【スズキ様のつよみ:世界208の国・地域にグローバル展開→アジアを中心に各国で シェアNo.1 】や、CAE/MBDの導入背景として【これまでの開発】【目指すべき開発:‘V’の字の開発】【開発工数の現状と今後】、及びCAE/MBDの活用事例の【 開発プロセスの改革】【性能の最適化(背反を予測した設計)】について語っていただきました。
また、今後の【CAE/MBD環境の整備】【設備インフラの強化】【CAE/MBDの普及と人材育成】についてもご説明いただきました。CAE/MBDの普及と人材育成の一環としては、社内イベントを開催し、メンバーのやる気や自主性を引き出し、機種開発業務とは別にCAE/MBDのスキル向上のためのイベントも開催されるとのことです。
最後に、「世界の人々に移動の自由を」との感動的なメッセージをいただきました。
参加者からのメッセージ(一部抜粋)
- 各社のさまざまな取組みに刺激を受けました。我々も自動化を進めたいと思っています。
- ユーザーのニーズ最優先の姿勢を各社のご講演から確認できました。
- Web上で結果を共有できるのは、解析者、設計者共にうれしい。
- 異業種として参加。たいへん興味深かった。
- 各発表は実直な内容で、とても聞き応えがありました。素晴らしいと思いました。
- Jupiter製品を使ったことはありませんが、事例のほとんどで大きな成果を得られていることに驚いた。
- Jupiter導入したくなりました!
- 講演内容はどれも面白いものでした。キーワードが分かりやすいコンテンツで、メッセージとして理解しやすかった。
- 自動化などでの進め方が大変参考になりました。設計者CAEの改善する発表が多かったので、専任者CAEでの活用例も聞けると良かったです。
- 他社の設計者CAEの取り組み、設計解析業務の効率化、MBD推進の事例を聞くことができ、大変勉強になった。
- CAEに関する課題(工数、人材不足等、設計CAE)も各社共通であるものと認識できた。
- 「設計者CAE」が意味するもの、その目的は各社で捉え方が異なると感じました。
- 縦軸に工数、横軸に開発イベントのグラフがとても印象に残っています。(中略)面積も同時に減らしていくという考え方はとても参考になりました。
- 他業種、異業種での話はあまり聴くことはできないので、今回、新鮮さや面白みを感じた。