CAE解析は、設計プロセスにおいてバーチャル空間を利用し製品に対して振動や荷重などを加えて設計上の問題を明らかにすることを意味します。つまり、コンピュータを使用して適切なシチュエーションの中でシミュレーションを行い、耐久性などを確認するのです。
CAE解析を検討されている担当者の中には、具体的にどのようなことをシミュレーションすることができるのか気になる方もいるのではないでしょうか?そこで、今回はCAE解析でできるシミュレーションの具体例について詳しく解説していきますので、興味のある方はぜひ参考にしてください。
CAE解析を活用しシミュレーションを行うことで得られる3つの効果
はじめて導入を検討している企業の中には、実際に活用することでどのような効果を得られるのかわからない担当者もいるのではないでしょうか?
現在、製造業などさまざまな業界が熱い視線を注ぐ理由は、費用対効果が大きく、将来においても活用せざるを得ないほど必要性の高いものになっているからです。はじめに、導入することによって得られる効果について解説しますので、ぜひチェックしてみてください。
バーチャル空間に複数のシチュエーションを再現できる
1つ目は、仮想空間上で製品テストに必要な状況を再現することができる点です。
例えば、製品を砂漠のような高温かつ乾燥した環境で性能チェックを行う場合、砂漠まで足を運び、試作品を試す必要があります。シチュエーションの再現にコストがかかるため、効率的にテストを行うことができません。
一方、CAE解析を使用すれば、コンピュータ上で簡単に再現することが可能です。例えば、高温な環境はもちろんのこと、宇宙空間を創り出すことも難しくありません。さまざまな状況に対応できる製品を開発することができるので、大きな効果のひとつといえるでしょう。
設計プロセスの効率化
2つ目は、設計プロセスの効率化です。
CAE解析を導入しない場合、実際に試作品を作り、テストを行います。そして、課題が見つかったときは、再び試作品を作り直し、もう一度テストを行わなければなりません。
はじめから設計に落ち度がない完璧な試作品を作ることができれば手間は少ないでしょう。また、一度のテストですべての課題を見つけることができ、改善することができれば、少ない工程で良質な製品を作ることができるかもしれません。しかし、現実は何回もテストを行い、安全に利用してもらえるように努めなければならないため、複数回テストを繰り返すことになります。その度に試作品を作り、チェックをしなければならないので、設計プロセスに多くの時間と手間がかかることになるでしょう。
CAE解析を利用すれば、試作品を作る前に性能チェックをすることができるため、大幅に設計のプロセスを効率化することができます。同時に人件費や試作品のコストを削減できるため、企業側に大きな導入効果があるといえるでしょう。
DXの推進
3つ目は、DXの推進に一役買ってくれることです。
DXは、デジタルトランスフォーメーションのことでデジタル技術を活用して人々の生活を変容させてより良いものにすることを意味します。将来的にデジタルを活用する企業とそうでない企業とでは競争力に大きな差が生まれるといわれており、経済産業省は日本の企業にDXを推進しているのです。
製造業においてもDXの推進は生産効率の向上や新しい価値の開発につながるため、必要不可欠となっています。CAE解析を取り入れることで、設計プロセスにデジタルを取り入られるため、DXを推し進めることができるでしょう。
CAE解析で何をシミュレーションできる?8つの具体例をご紹介
CAE解析でシミュレーションできることを、8種の具体例で紹介します。何をテストすることができるのか詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
パラメーター予測
1つ目の例は、パラメーター予測です。
例えば、タイヤは車両の安定性や動きに大きな影響をもたらします。一方、車両の種類は年々増えており、さまざまなシチュエーションで検証を繰り返さなければなりません。CAE解析を使用することで、シミュレーション時の負担を減らし、コストを削減することができるので活用されることが多いです。
具体的にテストできる内容は下記のようなものを挙げることができます。
- タイヤ圧
- 剛性
- 摩擦
パラメーターを特定し、状況の変化をテストできるため、非常に便利です。また、ソフトによっては仮想タイヤを作成することもできます。
構造力学
2つ目は構造力学シミュレーションです。
CAE解析を活用することで、製品の構造力学を把握することができます。例えば、自動車や宇宙船、ジェットエンジンなどの構造力学をテストする際に用いられることが多いです。これにより、構造上のさまざまな課題を見つけることができます。
造船や航空機の構造力学シミュレーションでは、荷重管理や設計、安全マージンなどを改善することができるため、コスト削減に効果を期待できます。
主に、線形解析や非線形解析が用いられることが多いです。
線形解析は、想定される荷重を加えたときに構造が壊れるかをチェックすることができます。静的な問題を解決する際に使われるのが一般的です。一方、非線形解析は接触によって変形が大きいときや線形性の仮定が崩れてしまうときに用いられます。例えば、高速衝撃落下の際の電子部品性能評価などは、非線形解析を使ってテストをすることが多いです。
流体力学
3つ目は流体力学シミュレーションです。流体の動きを把握することで製品に与える影響を確認することができます。流体力学によってシミュレーションできることは下記の通りです。
- 計算レオロジー
- 反応流
- 混相流
- 粒子流
- エンジンシミュレーション
- バッテリーシミュレーションなど
物理特性を考慮し、設計することができるため、エンジニアリングシミュレーションの精度を向上させることができます。
音響
4つ目は音響シミュレーションです。
音響解析は、製品の騒音を最小限にして音質を最適化するためのテストを意味します。実際に、現在は製品によって静音のものが好まれることもあるでしょう。また、騒音が激しい製品は売上に悪影響を与えるため、企業によっては音響が課題になるケースも珍しくありません。
音響解析を行うことで、音響性能を素早くチェックして可視化することが可能です。このようなテストにもCAE解析が用いられています。
電磁界
5つ目は電磁界です。
高耐久が求められる製品は、電磁界や電磁波がどのように作用し製品に影響を与えるのかチェックする必要があります。それを実現するのが電磁界シミュレーションです。
テストする際は、低周波や高周波を発生させて検証を行います。これにより、エネルギー変換や電気機械部品の性能、電磁干渉などを把握することが可能です。
電気化学
6つ目は電気化学シミュレーションです。
電気化学解析をすることで抵抗を減らすことができたり、劣化を最小限に抑えることができたりします。エッチング速度の向上を期待することができるため、革新的な燃料電池タイプの開発を行うことが可能です。
動作環境テスト
7つ目は、動作環境テストです。
動作環境テストは、製品の寿命や披露を解析することができます。基本的には、荷重を加えて疲労寿命を予測します。これにより、製品リコールなどのトラブルを未然に防ぐことが可能です。
安全性の確認
最後は、安全性の確認です。
特に自動車など使用にあたり生命に影響を及ぼす製品に使われるシミュレーションになります。動的システムをモデル化して検証もすることができるため、自動車の接触事故などをシミュレーションで再現することも可能です。
まとめ
今回は、CAE解析を使ったシミュレーションの具体例を8種類ご紹介しました。さまざまなシミュレーションを仮想空間上で行うことができるため、業態に関わらず多くの企業が導入しやすくなっています。もし、自社製品でCAE解析を活用することができるという企業は、コスト削減や設計プロセスの短縮など、さまざまな効果を得ることができるので、ぜひ導入をご検討ください。